愛媛県美術館のブログ

愛媛県美術館の日々の活動をちょっとずつ書き込んでいます。 美術館の事業準備状況、イベント報告、ある日の出来事などなど、美術館の活動を垣間見ていただけるように頑張ります。

2009年5月31日日曜日

散る桜 残る桜も 散る桜

本日のタイトルは、良寛辞世の句より。

というわけで、良寛展、先ほどついに閉幕しました。
ゴールデンウィーク以降は新型インフルエンザの影響も懸念されましたが、昨日・今日は会期中で最も多くの方にお越しいただき、有終の美を飾ることができました。ありがとうございました。
一点一点立ち止まって熱心にご覧になられる多くの方の姿が印象的で、改めて良寛書の「引きの強さ」を実感した次第です。

明日からの撤去に備えて、閉館後に静まり返った展示室で一人、少しだけ準備作業。
「1ヵ月半、ごくろうさまでした」と、並ぶ作品たちとしばし向かい合い、余韻にひたる。
日中の賑わいも、すでに過ぎ行く過去・・・。ふっと上の辞世の句が頭をよぎっていきました。
いやいや、しんみりはこのくらいにして(笑)。
明日・明後日と撤去・梱包したら、その後はまたトラックにて新潟へ。
全てのご所蔵者のもとへ、作品を無事に返し終わるまでが、お仕事です!

2009年5月29日金曜日

世界はそれを愛と呼ぶんだぜ

このポスターを見るのも、あと3日・・・。
今日は、午前中に数十名の団体さんが飛び込みで来ていただき、うれしい悲鳴でした!

1階の企画展示室では、昨日から「こどものとも絵本原画展」がスタートしましたので、明後日31日までは、再び上下階で企画展が2本立てになっています。どちらも愛にあふれた、心豊かになれる展示ですので、どうぞこの好機にダブルでご覧くださーい。

絵本原画展ということで、今回ショップにも名作絵本が勢揃い!
あんまり絵本には免疫がない幼少期を過ごしてきたtake4でも、聞いたことあるものがたくさん。

yukinkoさんも絶賛の「くものすおやぶん とりものちょう」には、take4も一目惚れ。
時代劇という設定からしてツボなわけですが、そこはかとなく漂うマニアック(サブカル)な空気が、すばらしいっ。だけど、もちろん読みやすく愛らしく仕上がっている。こういうのが、子どもも大人も楽しめる絵本としてのクオリティですよね。個人的にはやはり、有能な子分の「はえとりのぴょんきち」に、ただならぬ好意とシンパシー(笑)。

さて。良寛展が終わりますと、次にtake4を待っているものは・・・。
「円空・木喰展(仮称)」、12月12日開幕予定。せっせこと、準備中です。腕が鳴るぜ。
こちらも慈愛に満ちたやさしい仏さまたちが、たくさん会場にお越しになりますですよ。

そんなわけで今年のtake4は、江戸の民衆信仰芸術に染まりきってます。
いずれ、悟りが開けぬものかしら。

2009年5月28日木曜日

はじまりはいつも雨

take4です。
今日は午後からぱらつく小雨の中、松山市内のある個人の方のお宅へご所蔵作品を拝見に伺ってきました。
以前から、とある近代の郷土関連作家の資料を調査してほしいとのご相談を受けていたのですが、数が非常に多いので、何度かに分けてお邪魔することにし、ようやく今日が第1回目の調査。
数十点の掛軸を、1点1点採寸し、撮影し、調書に記録し・・・せわしくも実りあるものでした。

展覧会に関わることは、学芸員の最も大事な仕事です。しかし、展覧会に直接結びつかなくても、普段からのこうした調査というのもやはり、しりぞけられない大事な仕事です。
特に地方の公立美術館・博物館の場合、郷土の美術・作家・史料についての基礎的な調査研究(作品の所在情報など)は、いざというときのデータベースとして役立ちます。場合によっては、非常に貴重(希少)なものが出てきたりして、展覧会に結実する、さらには購入・寄贈・寄託へ・・・ということもあるでしょう。

かなり地道(=地味)な作業ですが、こういう時に、ご所蔵者と直接お話することで、縁や信頼関係も築かれます。学芸員にとっては基本中の基本。何だかんだ言っても、こうやって動いて調査したり、展示作業したりする時が、一番楽しいんですよね。

ちなみに。学芸員に最も必要な資質は何か?と聞かれた時、もちろんいろんな答えがあるとは思いますが、take4は「体力・要領・愛想(順不同)」をベスト3と言うことにしています(笑)。

2009年5月26日火曜日

スタートライン

 yukinkoです。バトンレースは昔からあまり得意ではないのですが、そろそろリレー会場の定位置につかなければならない時期がやって来ました。今まで「まだまだ、あの辺か~」とトラックを走っているtake4さんをヨユーのヨシコで見つめていたyukinkoですが、気がつけば、もうすぐそこまでバトンがせまってきている模様。う~ん、こうなると否応なしにどんどん緊張感が高まってきます。(あ、でもyukinko、緊張感って結構好きです。本番前、ビリビリ高まってくるあの感じがたまりませ~ん。←変。)
 と、いうことで本日午後13:30から、主担当j.bさんとともに第一回目の「タツノコプロの世界展」実行委員会に出席しました。下の写真は、展覧会ポスター、の一部です(チラリ!)
 本日の実行委員会では、まずは、展覧会の開催要項や規約、予算、作品概要、教育普及事業についての話し合いが行われました。(yukinkoはa-tashiさん、miさんと同じく、教育普及専門の学芸員なので教育プログラムについては熱~く!語って参りました)そして会議も終盤に差し掛かり、何か他に提案はないかという段になったところで・・・ダメモトで言ってみました。『コ●▲■』提案。 
 
 「ええっと、みなさんご存知だと思いますが、(タツノコ展の)前会場の新津美術館で『コ●▲■割引』というのを、やっておられるのですが、(愛媛でも)ダメですかね?『コ、コ●▲■』?」。
(※すみません・・・●▲■はまだ決定!ではないのでとりあえずナイショ!です)

 すると・・・一同、同じことを考えていたらしく、(待ってましたというような空気でした)その場は大爆笑~!!の渦に。そして、なんと最後にはちょっと前向きに検討!になって来ました(ウソー!)。
 と、いうわけで明日以降、j.bさんと相談しながら新津美術館に問い合わせです。しかし・・・ここ四国は愛媛で、『コ●▲■』人口ってどれだけいるんでしょう・・・。ちょっとドキドキ(ワクワク?)して来たyukinkoでした。

ラストスパート


良寛展も、いよいよ最終週に突入しました。
今日は平日にも関わらず、展示室の人口密度は土日並み!
会期は31日の日曜日までです。お見逃しなきよう。
来週は、また作品返却のため、新潟へ長旅に出かけます。


良寛さんと向き合ってきたこの1年も、もうじき終焉の時。いささか寂しゅうございますが。
明日は、次の企画展「こどものとも絵本原画展」の開展式。そしてその次の「タツノコプロの世界展」(7/25開幕)の火蓋も切って落とされました。


美術館では、振り返るヒマなく、日々新しい事業が進んでいきます。
綺麗にバトンをつなげるように、残り1週間、多くの皆様のお越しをお待ちしています。

2009年5月25日月曜日

ちゃくちゃく着々

yukinkoです。本日は休館日ですが、いろいろと近づいて来る展覧会の準備のため美術館3階にある事務室でせっせせっせと作業をしています。さて、下の写真の資料は何か?といいますと・・・
 これは毎月この時期に郵送している、作品ガイドボランティアのみなさんへのギャラリートークシフト表と美術館からのお知らせ資料の数々です。そして、その横に見えるのはボランティアさんたちへのワイロ!!なんと百万円札!!!(むっふっふ)。これで夏休みの「タツノコプロの世界展」のプログラムも安泰です!!!
 ・・・というのは冗談ですが(百万円札はドロンボー銀行発行の特製メモ用紙でース。裏にボランティアさんへの連絡事項が書いてありまース・笑)、美術館では「こどものとも絵本原画展」がオープンすると、すぐに次の企画展「タツノコプロの世界展」のプログラム準備が始まります。先日は、タツノコプロダクションのスタッフも来館し、夏に向けてどんどんタツノコムードが高まっています!!!
 と、このように次次回に向けての準備が着々と行われていますが、昨日もレポートしたとおり、一階の企画展示室では次回の展覧会「こどものとも絵本原画展」の準備が着々と進めてられています。それでは今日もちょっとのぞいて見ましょう~
  展示作業は快調!もうほとんどの作品が壁にかかっていました。今回の展覧会は幼稚園・保育園児の子どもたちが主な対象なので、作品のセンター(真ん中の高さ)は120cm。親子でお話しながら作品を追っていくことが出来、とても感じの良い、ほっとする展示空間になっています。そして上を見上げると、照明調整にとりかかり始めたboxyさんの姿が・・・。 さあ、これから作品の照度調整が始まります。 そして今日も「チラリ!」レポート。ここはyukinkoも大好きな「くものすおやぶん とりものちょう」のコーナーです。何故好きかというとyukinko、くものすおやぶんこと、おにぐものあみぞうに同じ匂いを感じるからです。(ちなみに子分のぴょんきちはa-tashiさんに似ています。盗賊のカクレバネはmiさんかなあ・・・笑)
 と、いうことで展示作業は明日も続きま~す。

2009年5月24日日曜日

チラリズム

 yukinkoです。今日は第二弾目のブログです。実は、本日午後17:00頃、ついに次回展覧会「こどものとも絵本原画展」の作品が美術館に入ってきました~!!しかし、本格的な作業は実は明日から。
 と、いうことで今日は明日から始まる展示準備の様子をちょっとだけ「チラリ!」レポートです。(余談ですがyukinkoはリオのカーニバルよりも阿波踊りの女踊りや越中おわら風の盆が好みです。やはり日本の美はチラリズム!ちょっとだけ見えるのが良いのです~・うふ)
 さて、展示室内では、担当学芸員boxyさんが、今回愛媛会場のみ限定の作品「しろねこしろちゃん」の点検を行っています。なんと、これが原画!!(大きい~!!びっくり!!)

 そしてこれは・・・おお、ひょっとしてかの有名な「ばばばあちゃん」ではありませんか!!  と、いうことで(本当に)チラリ!レポートでした。展示作業はいよいよ明日から!boxyさんがんばれ~!

また夏が・・・

 yukinkoです。最近なんだか急に夏がやって来ましたが、今朝、出勤してみると机の上に毎年恒例の回覧が・・・。今年もやって来ました『博物館実習』のスケジュール調整です。博物館実習とは学芸員の資格をとる学生のみなさんが、必ずとおる博物館現場での実践実習です。(yukinkoもそんなには遠くない昔・・・とおりました)
 愛媛県美術館の今年の実習は、8月2日(日)~8日(土)までの一週間。実習は終日、学芸スタッフ総出で、それぞれのコマを担当します。今年の実習生は17名。地元の愛媛大学を中心に、(出身は愛媛の)県外の大学で学んでいる学生もやって来ます。
 美術館や博物館では毎年8月になると、このように博物館実習が始まります。加えて、今年は学校の学習指導要領が改訂され、「鑑賞教育」が加わったことにより、美術館では鑑賞の研修申し込みに来られる先生方がじょじょに増え始めています。そして、実習とはまた別に、美術館活動についてより専門的に学びたい「インターン生」も各大学からやってきます。
 今年の夏もなんだか熱くなりそうです。

2009年5月23日土曜日

千客万来



take4です。
今しがた良寛展のフロアレクチャーを終えてきました。
予想をはるかに上回る皆様にご参加いただきました!
昨日、散髪してきた甲斐がありました(笑)


良寛って、つくづく語るのが難しい・・・。
そもそも托鉢僧として清貧の生活を何十年も続けた良寛さんを、なまくらのtake4が軽々しく語るのが罰当たりなのは承知の上。ただただ、その書の魅力が伝われば何よりです。

でも、易しく噛み砕きすぎると陳腐になりかねないし、難しく突き詰めると良寛さんの本質がストレートに伝わらない。そのバランスで、書の見え方も変わってくる。

ほのぼのと自由に生きた「理想像」ではなく、自分や社会に真摯に向き合った実像、そしてその反映としての書。自由と表裏一体の孤独。良寛書の魅力は、それを押さえた上で花開くもの。フロアレクチャーでは、その辺に重きを置いてお話したつもりです。
約1時間、皆さん最後まで熱心に聴いてくださり、感謝です。

若い方の姿もちらほら。こういう展覧会で若者を見かけると、俄然張り切るtake4。
ついついそっちばかり向いて話してしまいます。今日もガン見してしまった方、ゴメンナサイ・・・。





yukinkoは見た!

 yukinkoです。本日は午前10:30から12:00まで美術館の講堂にて、当館の情報サービスボランティアのみなさんの総会(年度初めの研修会)が開催されました。 美術館では情報サービスボランティア(114名)の主担当をboxyさん、そして作品ガイドボランティア(40名)を私、yukinkoが担当しています。そして、お互いにそれぞれのサブ担当でもあります。

 この二つのボランティア活動は、一方は館内のレファレンス業務、もう一方は展示室内で対話型鑑賞法をベースにしたギャラリートークの実施、と性格は全く違うものですが、しかし参加されているみなさんに、ほぼ99.999999%~共通している意識があります。

 それは、みなさん『美術館が好き』ということです。もちろん、この『好き』はそれぞれに違います。例えば「作品鑑賞が好き」という人もいれば「美術館という場そのものがとにかく好き」という人、また「現役時代に美術館のショップスタッフや、警備員として勤めていたけれど、退職後も何らかの形で美術館に関わりたいので参加しています」という方まで本当に様々です。(実は当館の作品ガイドボランティアには、私yukinkoのもと上司・・・副館長だったmさんも定年退職後、参加されていて、もうベテランです。)

 また、最初は「ボランティア活動そのものに意義を感じて・・・」という理由で参加されている方もおられますが、そういう方でもだんだんと通われるうちに『美術館に愛・・・』が芽生えて来られるようです。でも本当のことをいうとほんの数%は『愛実らず・・・泣く泣くお別れ』なんてこともあります。それは、まあ仕方ありません。
 さて、本日の研修会はボランティア担当のboxyさんより、①県の緊急雇用対策により新しく導入となった「美術館利用相談員」についての説明や、②「美術館でのマナー」についてのレクチャー、③活動内容の変更点等の話を中心に、スタッフ自身からも、ふだんそれぞれの現場で抱えている悩みや、こうしたらもっとよくなるのでは?等々の活動についての意見交換が行われました。
 実は情報サービススタッフの方々への研修は作品ガイドスタッフに比べると、これまであまり実施してきませんでした。(作品ガイドの方にはyukinkoの「どこまでも追いかけてくる」(こ、怖い)オニのよーな、しつこい練習会や研修会が待っています・・・)

 これは、当初美術館としても手探り状態で始まったボランティア活動であったこと(活動のスタートは情報サービスの方が先なのです)、そして何よりもだんだんと美術館の活動に協力して下さる方が増え、総勢100名近くになったスタッフ全員が出席可能なスケジュールが組みにくかった、ということが一番の理由です。しかしそんな中でも、いろいろ工夫してお互いの連絡調整を行っていたのですが・・・やはり(スタッフのみなさんに)育っていました、『美術館への愛』。

 先ほどもお話しましたが、yukinkoふだんは情報サービスボランティアはサブ担当で、boxyさんと比べるとスタッフのみなさんと過ごす時間は少ないのが現状です。しかし、本日研修会後、次々と次↓のような声がかかり、yukinkoのハートに火が付いてしまいました!!それは・・・

●「私は案内カウンターでどんな展覧会を行っているのを説明するのが仕事ですが、ただ展覧会タイトルを言うだけではなく、どんな内容だとか、もっとお客さんに喜んでもられるような情報をお伝えしたい。だから、作品ガイドの人たちが出席している展示替ごとのレクチャーにぜひ参加せてください!だからレクチャーの日程を情報サービスの方にも教えてもらえませんか?」
●「人前で話したりすることは苦手なのでトークは出来ないけれど、対話型鑑賞法に興味があるので、ぜひ研修の見学をしたい!研修日を教えてください。」
●「今年から(情報サービスボランティアも)展覧会ごとのレクチャーがあると聞いたけれどとてもうれしい!必ず参加します!」

 ・・・という、ものすごく積極的な、熱い声を受け取ったのでした!(あ、もちろんスタッフのみなさんは上品に話しかけてこられました。念のため。コーフンしていたのはyukinkoただ一人です・笑)でも、大感激しました!ものすごくうれしい!!!!!

 日本では一般的な美術館のイメージについて尋ねると、多くの人から「敷居が高い」「堅苦しい」「威圧的」という意見が返ってきます。そして現在、多くの美術館では、どうすればもっと沢山の人に利用していただき、また来たいと思っていただけるのかと模索しています。それにはいろいろな方法が考えられると思います。ですが、美術館とは「来館者に作品を見てもらうための場所」です。もっと言えば『みる』ということを、とことん考えることのできる場所です。また、いずれお話したいと思いますが、この『みる』という行為はやっかいで、しかし奥深く、面白いです。例えば「つくる」ということも、この『みる』ということの一部です。モノ創りには、体力・持続力に加えて、ふだんからの物事への観察力が欠かせません。
 ですので、私は、美術館でのあらゆる努力は基本的に「みる」という行為をより楽しく、より効果的に、より意味あるものにむかってなされるべきではないかと思っています。そして、この「“みる“という行為をより楽しく~」の努力はは館内のあらゆるレベルで発生します。                                                               
 
 そんなわけで、本日は情報サービスボランティアの方々に熱いパワーを頂き、なんだかとてもうれしい一日となりました。そしてうれしさのあまり、いつものように館内をノシノシと歩いていると・・・
 良寛展の関連事業で開催している「書道コンクール」の展示会場で、どど~んとひとつの作品が目に飛び込んできて、またまたyukinko奮起しました。 『やる気』!!!!!やはり言葉はパワーです!!!

2009年5月21日木曜日

王様のビジュツカン

唐突ですが。
かつて「王様のレストラン」というテレビドラマがありました。take4も大好きでした。
その中の1話。全くバラバラのアラカルトの注文を受けて、それをめぐって厨房で散々ドタバタ劇があった後、待ちくたびれてお怒りのお客さんにようやく料理が運ばれ、食べると美味しくて皆和やかになる・・・という回がありました。
ラストシーンで、その光景を厨房の陰から見ながら、こんなセリフが交わされます。

筒井道隆演じる若いオーナー・禄郎
 「いい気なもんですよね。あの人たちは裏で何が起こったか、全く知らずに美味しそうに食べてる」
松本幸四郎演じるギャルソン・千石
 「それでいいんです。それがレストランです」

もともといいセリフだなぁと思ってましたが、美術館で学芸員として働くようになって、take4はこのセリフを思い出す、というか噛み締めることが時々あります。
展覧会とはつねに一過性のもの。しかも、準備には数ヶ月~1年(長いと数年)を要していますが、それに比べると1ヶ月強の会期なんて、ごくわずか。結局、皆さんの目に触れるのは、はかなくもこの期間だけです。 まさに王様のレストラン。

「裏方業」とはそういうもんですよね。
本来、準備段階のドタバタ劇なんて、お客さんに見せる必要のないことなのだと思います。展示を見て、あるいは普及事業に参加して、何かを得て満足して帰っていただければ、開催する側としてこの上なく幸せなことです。

take4も、前に出るのはキャラではないので、何か裏でゴソゴソしている「縁の下の力持ち」とか「スーパーサブ」に憧れる性分です。「それでいいんです。それが美術館です」 と、時々千石さんになりきって、心の中でつぶやいてみたり(笑)。


さて、良寛展も今日を入れて、残り10日となりました。
今回の展覧会は、1日のうちで、展示室内でのお客さんの人口密度の変動があまりないように見受けられます。常に、まんべんなく人が居る・・・という雰囲気。
しかも、会場内は物音一つしないほど、静まり返っています。皆さん、熱心に時間をかけてご覧いただいているからでしょう。滞留時間もいつもより長いようです。ありがたいことです。


良寛さんの書は、決して瞬時にその魅力が味わえるようなものではないと思います。スルメのように見ているうちに、ジワジワ味が出てくる。だから、なるべくゆっくり一つの作品をご覧いただきたい。
展示数の多い展覧会は、必然的にペース配分が難しくなるし、後半は疲れてきて、集中力が落ちてきてしまいます。さらに、書の展示の場合、たいてい釈文(読み下し)や現代語訳も必要になるので、こういうものの分量(文字の大きさも大事です)や読む時間も考えないといけません。

展示構成として、ある程度のボリューム感(作品数)はもちろん重要ですが、多すぎるのも玉に瑕。極端に言ってしまえば、構成や雰囲気作りをきちんと練れば、たった1点の作品でも、満足のいく展覧会は成り立つと思います。
今回は、良寛さんの優しくも厳しい人柄が展示空間からも伝わるようにしたかったので、スッキリゆったりした展示を目指しました。

展覧会を作る醍醐味(悲喜こもごも)はいろいろあって、ついついこのブログでも脱線して余計なことまで(?)開陳してしまっているようですが・・・「王様のレストラン」のように、出来上がったものはあくまでスマートにかっこよく、そして美しくいきたいものです。

2009年5月17日日曜日

僕イケメン?

take4です。
しばらくおカタい話が続いてしまったので、再び元の(?)take4モードに戻りましょう。

良寛展では書以外にも、いろいろな作品が展示されています。
中でもまとまってご覧いただけるのが、良寛さんを描いた日本画、あるいは姿を刻んだ彫刻です。近代以降多くの芸術家が、良寛さんを慕い、自己の創作の糧にしたことがうかがえます。それに絡んで、今日はこんなネタを・・・。

良寛の肖像画として、従来最もよく知られているのは次の2つだと思います。
1つは、良寛自筆とされる「自画像」(部分、個人蔵:下左)。もう1つは安田靫彦(1884-1978)が描いた「良寛和尚像」(部分、良寛記念館蔵:下右)。(※2作品とも今回の展覧会には出品されていません)














つり上がった目元や尖ったアゴ筋は両者よく似ています。この自画像は、良寛を大いに慕った靫彦自身がかつて所蔵していたものなので、自ら良寛像を描く時に大いに参考にしたと思われます。で、出来上がった風貌は、実に靫彦らしい、凛としてかつ個性的なものに仕上がっています。
数多の良寛肖像の中でも最高傑作とされるこの靫彦の作品。ではなぜ、そう評されるのか。

実は生前の良寛さんと交流した人物による記録が残っています。木村家同様、良寛を庇護した庄屋・解良叔門(けら・しゅくもん)の三男栄重(よししげ)が著した『良寛禅師寄話』がそれです。ここに良寛の人となりや暮らしぶりが事細かに記されているのですが、その中に良寛の風貌について述べた一節があります。

「師神気内ニ充チテ秀発ス。其形容神仙ノ如シ。長大ニシテ清痩、隆準ニシテ鳳眼、温良ニシテ厳正、一点香火ノ気ナシ」

訳すると「師は神々しい気が内面から発せられている。その姿はまるで神仙のようだ。背が高く痩せていて、鼻が高くて眼は切れ長、動作は優雅だが厳粛でもあり、しかし抹香臭さが全くない」となりましょうか。

歴史画を得意とした靫彦ですので、制作にあたっては、所蔵の自画像以外にもこの史料から大いにインスピレーションを得たに違いありません。『禅師寄話』の記述に迫らんとする見事な表現力だと思います。

これ以後の良寛像が、いずれもほぼ同じような風貌をしているのは、この靫彦による創作が良寛イメージを決定付けるだけの大きな影響力を持ったからでしょう。靫彦が近代における良寛「発見者」と呼ばれるのも納得です。




















ということで、近現代の良寛像さまざま。

上左:山口蓬春(「動物愛護」部分、良寛記念館蔵。展示中です)
上右:平櫛田中(「良寛上人像」部分、財団法人ワコー文化・スポーツ振興財団蔵。展示中です)
下左:富岡鉄斎(「寛師遊戯」部分、良寛記念館蔵。展示中です)
下右:棟方志功(「和上執毫図」部分、良寛記念館蔵。不出品)

上の2者は靫彦に近いですね。かたや下の2者は、どちらも独自の表現を貫いた奇才ならでは。志功のほうはまだ切れ長の眼と尖ったアゴにその名残りがあるものの、鉄斎はまさに天衣無縫!彼らは良寛の「風貌」を再現することよりも、その自由恬淡な「人柄」をこそ表現したかったのでしょう。

さて。今度はさかのぼって、江戸時代に描かれた良寛像を2点見てみます。

















アレレ・・・?さっきとは全然雰囲気が違う。しかも面白いのは、ともに実際に良寛と親交のあった絵師が描いていることです。

左は秋田の四条派画家・三森九木(みつもり・きゅうぼく)という絵師によるもの(「手まりの図」部分、燕市分水良寛史料館蔵。不出品)。カットしてますがこの像の左には良寛直筆の和歌が添えられています。何ともまあ・・・ふっくらしてますね(笑)。でも「子どもと遊ぶやさしい良寛さん」のイメージはよく出ています。

右は越後の四条派画家・五十嵐華亭(いがらし・かてい)による「良寛肖像」(部分、木村家蔵。展示中です)。図の上には良寛の弟・由之(ゆうし)による良寛追善の和歌が添えられ、おそらく亡くなった後に描かれたものと思われますが、子どもの手を引いていて、こちらも優しさあふれるイメージ。横顔というのが当時としても珍しいですが、なかなか愛嬌のあるお顔です。

もちろん明治以前と以後とでは、写実に対する考え方なども違うので、「似ているのか否か」ということを同じ土俵で扱うのには注意が必要ですが、江戸時代に描かれたもののほうが、今も広く引き継がれている「好々爺」イメージなのが興味深いですね。すでに生前から、今と変わらない良寛イメージが出来上がっていたのでしょう。

新潟一帯や江戸の一部の教養人たちには、すでに生前からその書や歌が評価されていた良寛ですが、今のように日本の誰もが知る存在になったのは、明治になって以降。「心優しいお坊さん」のイメージは途切れることなく今に至りながら、そして、靫彦や漱石・子規、さらには會津八一(1881-1959)、川端康成(1899-1972)といった人々により、新たな「近代的な芸術家」としての良寛イメージが付与されていったと言えます。



2009年5月16日土曜日

暗いのにはワケがある


前回に続いて「作品保存」のお話を。
今回の良寛展のように、特に日本の古美術品を展示する場合、「会場が暗くて作品が見にくい」というご意見をいだたくことがあります。実際、油彩画などを展示する時よりも、照度は下げてあります。これはイジワルでも何でもなくて、ちゃんとした理由があってのことです。

現在、JIS(日本工業規格)で定められている基準値では、日本画は150ルクス、洋画(油彩)は300ルクス以下の照度で展示するようになっています。ただしこれは1979年に設定されて以降見直されていなくて、最近の国際的な文化財保護の観点から見ると、非常に高い数値になっています(300ルクスなんて相当明るいですよ)。現在アメリカやヨーロッパでは、紙や繊維に対しては50ルクス以下というのが基準です(その他も素材によって区別がはっきりしています)。在外作品の里帰り展の会場が、いつもより暗く感じるのはこのせいです(実際昨年、当館で開催した「ベルリン国立アジア美術館所蔵日本美術名品展」でも、この基準に沿って、50ルクス以下に保つようにベルリン側からの指示がありました)。

これら国際基準を反映して、日本国内でも、近年では徐々に見直しが進められつつあります。
例えば社団法人照明学会等が提唱する「積算照度(ルクスアワー)」という単位があります。積算照度とは、そのモノに対して一定時間当て続けた時の光の総量のこと。目安の一例としては、
 ① 特に光に敏感なもの(染織品・切手・版画など)・・・年間で12万ルクスアワー以下
 ② ①よりも光の影響を受けにくいもの(絵画など)・・・年間で36万ルクスアワー以下

とあって、例えば1日8時間照明を当て、年間300日開館するとして、この数値に沿って計算すると・・・
 ① 120,000(ルクスアワー)÷8(時間)÷300(日)=50ルクス
 ② 360,000(ルクスアワー)÷8(時間)÷300(日)=150ルクス

となり、一度に当てられる照度の最大値が出てきます。ただし、ここでも絵画作品は一律150ルクスという基準が提示されていて、国際基準から見ると緩いですね。文化財保護に関しては、日本はまだまだ過渡期にあると言えそうです。
現状では国際基準に沿って、各館で自主的にセーブしているところが多いと思います。古美術で100ルクスを超える照明を当てているところはあまり無いでしょうし。極力、上でいう①の事例として考えようという傾向です。ちなみに今回の良寛展では、平均50~60ルクス、最大でも80ルクスまでに抑えています。

もちろん、ただ暗くしておけばいいということではなく、出来るだけ「明るく見えるような」配慮は必要です。
作品と鑑賞者の距離、演色性(自然光で見た時との差)、グレア(反射や映り込みなどによるまぶしさ)など、快適な照明のためにはいろいろな要素が絡み合っています。最新設備の館や照明専門のデザイナーさんが入ったりする場合はいいけれど、そうはいかないことのほうが多いので、照明の作業は、学芸員としてつねに試行錯誤する場面でもあります。壁を照らして空間全体を均一に明るくする、あるいはその逆に作品の周りを暗くして、作品を際立たすことで明るく感じさせる・・・など方法はケースバイケースです。

美術館・博物館には「展示」と「保存」という、相反する使命があります。学芸員は、その2者の両立(バランス)をかなえるために、作品の取り扱いや保存・展示環境を考えていかなくてはいけません。前回の飲食物や生花などのお話も、その根幹は同じです。「今の我々だけが快適に見られる」という考え方は、文化財保護ではナンセンスです。その作品が生きてきた年月と同じだけ、今後も保存して後世に伝えていくこと(例えば200年前に作られたものなら、今後200年間も同じ状態を保つ)が理想だとtake4は思っています。

最後にコツを一つ。
何かいつもより暗いなぁ・・・と感じたら、展示されている作品たちの長寿をねぎらってあげるように、いつもより時間をかけて鑑賞してください。だんだんと目が慣れてきますので、これでずいぶんと見やすくなりますよ。

2009年5月14日木曜日

かもさないで

take4です。
気候はすっかり夏のよう。新緑が爽やかですが、すでに暑いです。梅雨ももう間近ですね。

毎年のことながら美術館(で働く身)にとっては、ちょっぴりピリピリする季節になってきました。
「かもすぞー」(漫画『もやしもん』より)とばかりに、虫やカビたちの活動が盛んになってくるからです(虫の場合は「かも(醸)す」は表現が違いますが)。

take4及びA-tashiさんは「作品保存」についての担当責任者でもあります。作品の修復や、毎年夏場に行っている燻蒸(くんじょう)作業をはじめ、季節を問わず、普段から作品や展示室の環境に悪影響が及ばないように目を光らせなければいけません。が、当然、2人だけでカバー出来るものではありませんし、本来「保存」というのは美術館・博物館の仕事において最も重要な柱の一つ。館内業務に関わるスタッフ皆が意識しておかなくては徹底はできません。

ということで、特に現場(展示室)に居る時間が最も長い展示案内員さんたちを中心に、警備員さん、清掃スタッフさんには、異常(温湿度の激変、虫・カビ等の発生)があれば、すぐにtake4やA-tashiさんに連絡をしてもらうと同時に、上のような記録用紙を渡しています。いつ、どこで、誰が発見したか。また発見時の状況(虫の種類や生死、周囲の被害状況)などを書き込んでもらい、さらに、捕獲可能であれば捕まえて、袋などに入れて添付してもらいます(開封してからのお楽しみ・・・)。
この用紙が届いたら、現場も確認して、『文化財害虫事典』で虫の特定作業。今後被害が拡大するような恐れがあれば、当然何らかの措置(ex.緊急燻蒸)を取る必要も生じえます。

4月下旬くらいから、数日おきに、この用紙がtake4の机上に届けられるようになりました(笑)。
今年もいよいよ「かもし」シーズン到来!一層、気を引き締めないと。

これから暑くなってくると、エントランスのベンチに腰掛けた時に、ついつい(あるいは無意識に)ペットボトルのお茶を飲みたくなる・・・かもしれません。しかし、これが危険の素。余計な水分、あるいは食べこぼしは、虫やカビたちの美味しい栄養となってしまいます。展示室の中は当然ですが、そこに直結しているエントランスや展望ロビーといったオープンスペースの時点から、こうした虫の侵入経路やカビの発生源を極力シャットダウンしておかないと、意味も効果もありません。
なので当館も新館については、展示室内はもちろんですが、エントランスや展望ロビーも、飲食については一切をお断りしています。お見かけした場合は、スタッフがお声掛けさせていただいていますので、よろしくご協力ください。
のどが渇いたので、ちょっとお茶したいなぁ・・・という時は、新館西側のレストランもしくは、レストラン&南館の入口脇に設置してある自動販売機(前庭や中庭その他館外にはベンチもたくさんあります)をご利用くださいね。なお、南館のエントランスのほうは飲食可能ですので、そちらもご利用いただけます。

また、飲食物ではなくても、生花や濡れた傘なども、飲食物同様に温湿度の変化や虫・カビの発生を助長するものということで、新館への持込はご遠慮いただいています。傘は正面入口すぐの傘立にお預けください。生花は南館のふれあいアートセンターでお預かりしております。

快適な美術館づくりには、来館される皆さまのお手伝いが必要な場合があります。
何卒、ご了解の上、ご協力お願いできればと思います m(_ _)m

2009年5月13日水曜日

墨と筆を使って―なりきり良寛さん 第2弾

墨と筆の線を味わってもらう講座を開催しました。
(第1回目の講座のレポートはブログにもあげています。)

まずは、今回の力作をご覧ください。
良寛さんに劣らぬゆったりとしたよい字だと思いませんか?










今回も、文字もまだ書けない小さなこどもから、良寛の愛語を書くことを目標に参加してくれた大人まで、さまざまな参加者が来てくれました。

筆ならしのコーナーでは、子どもも大人も混じって、いろいろな書き方を試していくうちに、伸び伸びとした線、不安定な線などいろいろな表情のある線で大きな紙があっという間にうめつくされました。
そこで、自ら筆を口に加えて書こうとしている男の子を発見!思うように扱えないのでもがいていましたが、何事も挑戦です!

仕上げに、筆ならしで得た自分なりの線で、「四十七音字」もしくは「愛語」の書を書きました。みんな真剣そのもの。こういう1つのことに集中する時間というのもいいものですね。

墨の匂いに包まれた部屋で、墨をすったり、紙の上を筆を走らしたりする中でみつけた感覚や発見を大切にしてほしいです。
 ※一部、講座参加者の作品は「良寛墨宝展」の会場前に展示しています。

   
       こちらは、参加者が書いてくれた良寛さんの似顔絵です。
      良寛さんも喜んでいることでしょう!

2009年5月10日日曜日

これぞマスターピース

木村家所蔵の良寛遺墨は、平成17年に東京と大阪で初めてまとまって一般に公開されて以後、毎年1回のペースで全国を巡回して公開されています。一昨年は、若き日の修行の地・倉敷、昨年は故郷新潟のおとなり富山で展示されました。

今回は、愛媛で開催する意義をしっかり持たせるべく、オリジナルの構成を取っています。もちろん根幹となる木村家の良寛書については同じですが、それ以外の部分は、それまでの会場とかなり異なっています。
では、愛媛と良寛さんの関係とはいかに。

34歳で倉敷・円通寺での修行を終えた後、再び新潟に戻るのは39歳の時。この5年間の空白期間、良寛は全国行脚をしたと伝えられます。倉敷を出た直後、土佐に滞在したという資料がありますので、おそらく空海や一遍ら行脚僧の先達たちの生まれた四国をまずは旅したと見るのが有力です。伊予の地へも訪れたでしょうか・・・これは残念ながら推測するしかありません。

時を隔て、明治末~大正初期。夏目漱石と正岡子規が、まだ世間では全くと言っていいほど知られていなかった良寛の歌や書をいち早く評価しました。何とかして遺墨を入手しようとしていた様子も日記や手紙から分かります。

また、戦後の書壇をリードした本県出身の村上三島氏(1912-2005)は、60歳になってから良寛に惹かれ、それまで学んでいた中国の書を脱却して、良寛調の書風を追求していきました。今回は、当館所蔵の三島氏の良寛調作品も展示しています。

会場には、漱石、子規、そして三島氏、それぞれの良寛についての評言・発言もパネルにおこしていますので、愛媛ならではの良寛さんへのアプローチとして堪能していただけると思います。

そして、さらに。
今回、実に30年ぶりに新潟以外の地で公開される良寛書の名品もあります。
以前、こちらで少し触れた六曲一隻の屏風です。

中国唐代の禅僧・趙州(じょうしゅう:778-897)和尚の『十二時歌』という詩を書いたもので、数ある良寛草書の中でも最高傑作の一つと言われています。木村家に身を寄せる以前、まだ国上(くがみ)山中の乙子(おとご)神社脇の草庵で暮らしていた65歳頃の作とされます。

木村家時代の書は、最晩年の円熟の境地を示す、神々しいまでの落ち着きと気品を放っているのに対し、この屏風が書かれた「乙子時代」と言われる時期は、良寛の生涯でも最も脂の乗った充実期で、自由闊達でくもりのない生き生きとした筆致が魅力です。この『十二時歌』屏風も、白い紙の上で、点と線とが踊り跳ねるようにリズミカルに配置され、「文字」を見ているというよりも、現代の抽象芸術を見ているような、不思議な感覚になってきます。「読めなかろうが、そんなの関係ねぇ!」といわんばかりの良寛のみなぎる自信と集中力・技術とが見事に昇華していると思います。これまでほとんど一般には公開されることのなかった作品なので、保存状態も抜群に良く、紙の地の白さと黒々とした墨色との対比(あるいは調和)が絶妙かつ爽快です。

・・・と、ここまで言葉をいくら尽くしても、名品の素晴らしさを伝え切ることは不可能です。もちろん、なるべくそれを的確な言葉に置き換えることが、我々学芸員や研究者の重要な仕事でありますが、紙面やパソコンの画像で見て良さが分かるなら、展覧会をやる意味も無いわけで。

百聞は一見にしかず。お待ちしております。

2009年5月6日水曜日

良寛さんがいる

世間は連休最終日・・・連日出勤してるtake4は、何曜日かも判然としませんが(泣)。
良寛展は、今日も朝から大勢のお客さんがいらっしゃってます。ありがとうございます。

もちろん「良寛書の名品」を見ていただく展覧会ですが、決してシブシブの難解な展示ではありません。
やはり良寛というと、みなさん数々のほのぼのエピソードに彩られた「心優しいお坊さん」というイメージを持たれていると思います。良寛の書を深く味わうするには、その生涯や人となりを知ることが不可欠ですので、「良寛さんが会場にいるような感じ」を出すために、take4なりに演出をいろいろ考えました。

その最たるものが、こちら。良寛さんを知る誰もがイメージするであろう2つの資料を会場の冒頭に展示しています。










可愛らしい手まり(右)とひび割れた鉢の子(左)。いずれも良寛遺愛の品として、それぞれ新潟の旧家に伝来してきたものです。
特に手まりは、良寛イメージを象るうえで決定的なものですよね。新潟にはいくつか実際に良寛が使ったとされる手まりが残っていますが、今回お借りしたのは、シンプルな模様や糸のほつれ具合にとても味わいがあって、リアルな雰囲気がプンプンしてきます。直径8センチほどの小さな小さな手まり。江戸時代の遊びまりは、このサイズなんだそうです。中にゼンマイの綿を詰めてあって、それでよく弾むということです。思い浮かぶのはこの有名な歌。

 霞たつ ながき春日を こどもらと 手まりつきつつ この日暮らしつ

一方の鉢の子は、その名の通り木鉢です。正確には「応量器(おうりょうき)」と言うものですが、つまり托鉢の際に持ち歩く鉢です。表面には黒漆が塗られていますが、大きく亀裂が入り、漆もだいぶん剥げてしまっています。良寛さんはどこの寺にも属さず、托鉢僧として一生を貫いた人。この鉢の子を見ていると、その清貧の人生の全てが凝縮されているように感じて、胸がじんわり熱くなります。鉢の子を詠んだ歌としてはこんなのが知られています。

 春の野に 菫(すみれ)摘みつつ 鉢の子を 忘れてぞ来し あはれ鉢の子

肌身離さず持ち歩いていたことがよく分かる歌ですが、その大事な鉢の子を忘れて帰ってしまうほど花摘みに夢中になってしまうところが何より良寛さんらしいですよね。

会場は、まずこれらに迎えられてから、書の世界へと進んでいきます。これ以外にもいくつか仕掛けがありますが、あとは来られてからのお楽しみ・・・ということで、ここまで。

展覧会とは一つの物語です。よってストーリーテリングや演出が大事になります。もちろん素晴らしい美術品は、そのモノ自体が圧倒的なオーラを放っている訳ですが、学芸員としては、蛇足とは思いつつも、皆その魅力をさらに何割か増しにしたいと考えます。そこが腕の見せ所であり、展覧会の根幹を支える部分だと思います。

会場で、「良寛さんの気配」を感じていただければ、何よりです。

2009年5月5日火曜日

ポチっとな

薔薇展は残り10日あまり、良寛展はぼちぼち折り返し・・・というところですが、夏の展覧会の準備のノロシも上がり始めています。
そういや去年の今頃は「八犬伝の世界展」の準備で、take4も血まなこでした(そんな青春の日々の記録は、左のアーカイブ2008年5月、6月あたりをご覧ください)。夏休みの企画展って、毎年気合の入り方が特別な感じがするんですよね。楽しく、アツく盛り上げたい!

で、今年の夏の愛媛県美は、「タツノコプロの世界」展です!
「ヤッターマン」「ガッチャマン」「みなしごハッチ」・・・ご存知、日本が世界に誇るアニメ制作集団・竜の子プロダクションの半世紀の歩みとその仕事を、貴重な原画類で振り返るものです。
展示構成や関連イベントは、現在、鋭意準備中ですので、もう少しお待ちください。

・・・と、ここまで語っておいてなんですが、take4は担当ではありません。
夏の企画展初担当のj.b.さんと、毎夏プライベートはすべて放棄して(笑)プログラムにのめりこむyukinkoさんを中心にお贈りする予定です。

そんな2人の周辺には、すでに広がるタツノコワールド。2人とも名札のストラップがハッチになってます。


yukinkoさんの机上はすでに埋め尽くされるように数々のグッズが・・・。先日まで偶然近くのデパートにタツノコグッズショップが特設されていたのですが、j.b.&yukinko両氏は早速赴いて、資料やグッズを仕入れてきたようです(yukinkoさん曰く「スイッチが入っちゃったんだもん★(輝く眼)」)。さすがは、何事も最初は形から入りたい(←怒られるぞ)yukinkoさん・・・いつもながら感服(すでにガイドボランティアスタッフさんたちとの連絡用に「ドロンボー銀行券」(メモ用紙)を使っているとのウワサも)。


そんな盛り上がりをtake4も見て見ぬフリ・・・出来るはずもなく、yukinkoさんに連れられ、グッズを買ってきてしまいました(しっかりヤッターマンのストラップ→)。うーん、おそるべしタツノコプロ。おそるべしyukinko。


夏男(7月生まれ)のtake4は、ほぼ毎年のように夏の展覧会を担当していたのですが、今年は久々に静観できるかも・・・と思っていたけれど、何だかんだ言って、結局面白そうなところに流されていく我が身は止められず。このままだと、あれこれ手伝ってしまうハメになるのでしょう・・・とほほ。でも楽しむための努力は惜しんではいけません!

展覧会は、夏休みにあわせてご家族で楽しんでもらえる内容になると思います。乞うご期待!

以上、準備に忙しい両氏に代わり、影のメンバー(予定)take4が速報いたしました。

Congratulations

連休真っ只中、皆様いかがお過ごしでしょうか。
美術館も連日関連イベント続きで、賑やかです。
良寛展のほうは、昨日の早坂暁さんの講演会に続いて、本日は書道・書写コンクールの表彰式を行いました。
特選は12名(小学1年生~高校3年生まで各学年1名ずつ)。今日は、出席してくださった8名の方に賞状と副賞(展覧会図録など)を授与しました。
式のあとは、各自の作品の前で賞状を手に記念撮影。そして、take4が展示室で良寛さんとその書について少しお話させていただきました。
その他の入選者の方(約120名)の作品も、新館2階の展望ロビーに、会期中の5月31日(日)まで展示しています(入選者一覧は、こちらのあいテレビホームページに掲載中です)。

ローズ・ガーデン最終回!

薔薇空間展(~5/17)に合わせて美術館中庭で開催してきました、ローズ・ガーデンも今日・明日の2日で最後です。今回は、気候が暖かくなったこともあり、花が一層見事に咲いています!

明日5月6日(水・振替休日)は14時からこちらの庭を前に、愛媛バラ会の石橋秀通さんによるバラの育て方セミナーを開催いたします。バラを育てている方、またこれから園芸を始めようとお考えの方もぜひお越しください。
今回登場しているバラをいくつかご紹介します。
こちらは「ロサ・ガリカ・ウェルシコロール(多彩なガリカ)」、広く「ロサ・ムンディ(世界のバラ)」と呼ばれ、親しまれてきました。ガリカとは、古代ギリシャ時代から育てられてきた園
芸品種です。ルドゥーテも描いていますので、比較してみてください。
そしてこちらは「ロサ・グラウカ(灰色のバラ)」。名前の通り、葉や茎が灰色がかった珍しいものです。そしてトゲの場
所にも特徴があり、上からは見えないのですが、裏から見ると茎にしっかりとついているのです。
そしてこのガクの形が面白いバラは、「シャポー・ド・ナポレオン(ナポレオンの帽子)」。現在展示中のルドゥーテの『バラ図譜』は、ナポレオン妃ジョゼフィーヌが世界各国から収集したバラの数々を描いたものです。

2009年5月4日月曜日

記念講演会開催!

今日は17時から、良寛展の関連事業として愛媛県出身の劇作家・早坂暁さんの記念講演会を開催しました。会場は、美術館に向かい合わせて建つ松山市民会館中ホール。 定員500席の会場です。

リハーサル中の会場。 こんなホールです。かなり広いです。
事前申し込みなしの当日自由参加というイベントでしたので、果たして席が埋まってくれるだろうか・・・。
もしガラガラだったら、早坂先生にも申し訳が立ちません。関係者一同、ソワソワしながら迎えた本番・・・結果は。

遅めの開始時間にも関わらず、ご覧の通り、大入り!ありがとうございます(涙)
おかげさまで、展覧会のほうの入場者数も、会期中の最高記録を達成いたしました。

かつて良寛を主人公にしたドラマの脚本を書かれた早坂先生。その際に、新潟で取材されたお話を中心に、良寛さんの生涯と書の魅力を、穏やかな語り口でユーモアを交え、分かりやすく語ってくださいました。

先生曰く、良寛書は「読めないけど、それが魅力」。やわらかな線質と自由な筆法を、新潟の鳥「トキ」に掛けて「ニッポニアニッポン」(=中国の書法から完全に脱し、かつ日本の書の伝統においても唯一無二の孤高な存在)と評され、代表作品「愛語」の精神を、今の混迷する世界情勢にとって最も必要なものであると結ばれました。
take4は、裏方としてスライド(パソコン)係に徹していましたが、拝聴しながら、さらに様々な良寛イメージを膨らませることができました。
9日(土)と23日(土)には、take4もフロアレクチャーを行いますので、こちらもどうぞご参加ください。

2009年5月1日金曜日

1st ANNIVERSARY

take4です。
タイトルにもあるように、われらがこの「び~ぶろ」、開設して丸1年がたちました。
今後も、どうぞごひいきにしてやってください。

昨日のmiさんの「なりきり良寛さん」報告で、take4もなりきって書いた「愛語」がUPされてしまいました(恥)が、上の写真が良寛さんご本人の「愛語」です。やはり天と地の差・・・(当たり前や)。
技術的に真似ようと思っても、真似しようのないのが良寛の書と言われます。そこが良寛書が良寛書たる一番の魅力。
書は鑑賞するだけではなく、実際に自分で書いてみると、様々な発見がありますね。

先日触れた『とめはねっ!』というマンガの中でも、良寛の書が登場します。
主人公の女の子(柔道部所属の体育会系。ひょんなことから書道部とかけもちすることになってしまう)が、「きれいな字」を書くことにこだわりすぎてスランプになってしまった時に、良寛の書を見て感銘を受ける・・・という重要なシーン。
やはり良寛さんは、書を学ぶ上で、誰もが一度は通る道なのでしょうね・・・興味深く読みました。

最後に、良寛展関連イベントのお知らせです。
5月4日(月・祝)に、本県出身の劇作家・早坂暁さんによる記念講演会を行います。
1993年に『乳の虎・良寛ひとり遊び』というテレビドラマの脚本を手がけられ、それ以降、良寛についての著作・講演活動を続けられています。
会場は美術館の向かいの松山市民会館中ホール。16:30開場、17:00開演です。
先着500名。聴講は無料ですが、ご入場の際に「良寛墨宝展」の観覧券(使用後の半券でもOKです)が必要となりますので、ご参加希望の方は、忘れずにお持ちください。

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